ボードゲームの日々

ボードゲームを中心に、いろいろなことを勝手に考えてみる。

【雑記】拡大再生産について考える

どうも、こすとっくです。

今回は、ボードゲームをしているとよく聞く言葉「拡大再生産」について、個人的な考えを書いていきたいと思います。

読んでくれた方に少しでも楽しんでもらえれば幸いです。

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目次

1. 拡大再生産ってなに?

2. 開始時期と期限

3. 初期資源と借金、利子

4. ビルド系の言葉との混同

5. 資源の種類数と労働者

6. まとめ:VP獲得までの道筋

 

1. 拡大再生産ってなに?

「拡大再生産」とは、簡単に言うと、生産等によって得られた資源、資金を投資に当てることで、生産力を拡大し、より多くの資源、資産を得ようとする理論です。

例えば1年間で1億円を生み出す建物を持っているとします。1年経つと1億円が得られるわけですが、この1億円を使ってもう1棟建物を増やすことを考えます。すると、せっかく1年稼働して得られた1億円を失う(正確には建物等の資産に代わり、残っていますが)わけですが、次の年以降、年間2億円が得られることになります。上記の例だと、例えば5年運用時には、元々の建物だけだと、1億×5年の5億円が得られるのに対し、1年後に投資を行って1棟増築した場合には初年度利益はありませんが、5年目には2億×4年の8億円が得られます。

このように、先々の大きな利益を見越して投資を行うことで、一時的には利益を消費しますが、将来的にはより大きな利益を得るような動きを、「拡大再生産」と呼びます。

ボードゲームにおいては、自身の能力や生産力(個人ボード等で管理されるステータスやカード、タイル等で表される「タブロー」など)をリソースを投じて強化し、ゲーム後半のアクション、リソース獲得の効率を高めていくような動きのことを指して、「拡大再生産」と呼んでいます。

 

2. 開始時期と期限

拡大再生産を目的とした投資はいつでも有益というわけではありません。成果をあげる期限がある場合には、なるべく早くに投資を行うことが重要です。先ほどの例では投資が1年遅れるごとに5年目利益が1億円ずつ減ってしまいますし、投資にかかる費用によってはマイナスになってしまう可能性もあります。

ボードゲームにおいては、特定のラウンド数や獲得勝利点でゲームが終了してしまうため、成果の期日が存在することになります。したがって、なるべくゲームの序盤に投資を行うことが理想的です。逆にゲーム終盤で投資アクションをしてしまうと手数やリソースにおいて損をしてしまう可能性もあります。ゲーム終了までのラウンド数、アクション数を考慮して、投資の有効性を検討することが重要です。

 

3. 初期資源と借金、利子

1番はじめの投資を行う元金はどこから得られたものでしょうか。元々所有する資産かもしくは銀行等で借り受けたものとなるでしょう。借金となる場合は利子が発生するので、その金額や返済計画について十分検討する必要があります。利益目標を決め、リスクと相談しながら投資金額を検討し、利子を考慮して借り受け金額を決定します。

ボードゲームにおいては、初期資源が配られるものやアクション権を消費(ワーカー配置など)して資源を獲得するものなど、借金の概念がないものが多いです。これは、借金というシステムを加えることで、思考プロセスが1つ増えるため、必要以上にゲームを重くしてしまう危険性を有しているからだと思います。また、そのゲームの経験が少ない場合には、ゲーム内の相場感がわからず、いくら借りるべきか戦略上妥当な金額がわからないという可能性があります。それでも借金というシステムが組み込まれているゲームはやはり重量級のゲームが多いと思います。

 

4. ビルド系の言葉との混同

ボードゲームメカニクスについては、仕切りがわかりづらいものが多く、とりわけ「拡大再生産」「エンジンビルド」「タブロービルド」などは少し検索するだけでも人によって使い分けが異なると思います。ここでは、私なりの勝手な解釈を考えていきます。

まず、「拡大再生産」ですが、これは前述のとおり、「生産等によって得られた資源、資金を投資に当てることで、生産力を拡大し、より多くの資源、資産を得ようとする理論」です。この拡大再生産を起こすメカニクスの代表的なものが「エンジンビルド」「タブロービルド」になります。

「エンジンビルド」は相応のコストを支払うことで自分だけが使用するエンジンをつくるメカニクスです。エンジンは基本的に「資源の変換を行う」ものを指すと思います。例えば、高価な赤の資源をつくりたいときに青の資源2つで赤の資源を1つを得られるような自分だけのアクションをつくるような感じです(このアクションは手数を必要とするかもしれませんし、フリーアクションかもしれません)。

「タブロービルド」は個人ボードのマーカーやカード、タイルなどによって各プレイヤーの手元に表されるステータスなどを強化していくメカニクスです。個々人の能力強化を手元に表しているわけです(タブロー)。ここでいう能力には明確な定義があるのかもしれませんが、私がいろいろ調べた感じではよくわかりませんでした。そもそも毎年多様なゲームが出てくる中で、定義はあいまいになり、変わってくるものなのかもしれません。

ここで疑問なのが、「エンジンビルド」と「タブロービルド」の違いです。こちらも明確な定義の違いがあるようなのですが、よくわかりませんでした(繰り返しになりますが、ここで示すのは私の勝手な解釈です)。そこで、私なりの解釈としては、各個人が有する能力、ここでは「自分だけのアクション」「資源変換」「生産力向上」「アクション効率化」などを強化するものはすべて「エンジンビルド」ゲーム(もしくは単にビルド系ゲーム、ビルド要素をもつゲームなど)と考えることにしています。その中で、手元にその能力を示し、常に公開されるものを「タブロービルド」、固有の山札を強化するものを「デッキビルド」、袋から引くチップなどを用いる「バッグビルド」など、その強化(ビルド)されるものに応じて名前が付いていると考えるのがわかりやすいと思います。そして、そのすべてが「拡大再生産」をしていることになります。拡大再生産とはメカニクスの名称ではなく、エンジンビルドする目的、結果であり、そのエンジンビルドの中身が各種「〇〇ビルド」なのです(たぶん一般的な定義とは異なりますが、笑)。

少し脱線しますが、エンジンビルドは入力のメカニクスでも出力のメカニクスでもなく、通り道なのです。入力のメカニクスとは、ワーカープレイスメント、オープンドラフトのようなあるルール制限を有するはじめのアクションであり、その結果、リソースや勝利点などを得るものと考えています。反対に出力のメカニクスとは、リソースを勝利点に変換したり(契約履行)、ある特定のセットをつくったり(セットコレクション)するなど、勝利点につながるものです。エンジンビルドは、入出力の途中にあるメカニクスであり、ある入力メカニクスによって個々の能力(入力メカニクスの私有化、強化、効率化など)を強化し、より勝利点行動(出力メカニクス)に向かうルートを効率化するものとなります。このような入出力をつなぐメカニクスは、他にもリソースマネジメントなどが挙げられると考えており、近年の重量級ゲームには当たり前のように採用されています(重量級ゲームでは多くの場合、個人能力強化や複数のリソースのマネジメントが行われる)が、その重要性は入力、出力のメカニクスと比較して小さく、ゲームの特性、根幹を示すものではないと考えます(もちろん、これらがゲームのおもしろさの根幹として、あるゲームの大部分を占めていることもあります)。

 

5. 資源の種類数と労働者

例えば、あるお菓子をつくるゲームを考えてみましょう。お菓子をつくるには小麦粉、牛乳、砂糖が必要で、それぞれを生産しつつ、お菓子をつくります。まずは畑をつくって小麦粉をたくさん生産することにしました。しかし、砂糖や牛乳も同程度生産しないと、小麦粉だけたくさんつくってもお菓子をたくさんつくることはできません。ひとりでお菓子をつくるためには必要な材料をまんべんなく生産する必要があります。このように、必要な資源が複数ある場合には、どのステータスもバランスよく伸ばす必要があります。

しかし、共通の場もしくは他プレイヤーから材料を買えるならば話は別です。自分ですべてつくらなくても仕入れればいいんです。ただし、高コストであったり、他者が得したりするなど、自身に生産力がある方がよいかも知れません。このようなゲーム構造であれば、自身の強みとなる部分を育てる特化型の戦略をとることができます。他プレイヤーを利用するようなプレイで、インタラクションが強いデザインになるかもしれません。

また、製作するお菓子によって、各材料の消費量が違うかもしれません。この場合、需要の高い材料に特化しながら進めることが効率的かもしれません。この場合も状況に合わせた特化戦略が重要でしょう。

さらには、施設、設備ばかり充実させても働き手が足りなくなる可能性があります。この場合は施設投資に合わせた人的資源の確保が必要になり、バランスを考えた戦略が求められます。

このように、同じような資源生産からの商品生産で勝利点を獲得する流れを持つゲームでも少しの違いでプレイ感が変わってきます。バランス重視か特化戦略かはプレイヤーの好みによりますね。

 

6. まとめ:VP獲得までの道筋

「拡大再生産」はメカニクスではなく、ゲーム中における理論、戦略いう理解が私にはしっくりきます。あくまで、ゲームで勝つための勝利点(VP)獲得のための道筋となっています。しかしその「できることがどんどん増えていく」というシンプルな効果は非常におもしろく、程度に違いはあれ、多くのゲームで採用されています。私も大好きな「拡大再生産」、ぜひボードゲームで味わってみてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。